タイへの移住を考えているなら、医療費や保険についての理解は欠かせません。
タイは医療水準が高く、多くの外国人が治療を受けていますが、医療費は日本の健康保険と比べると高額になることもあります。安心して新生活を始めるためには、適切な保険の選択が重要です。
本記事では、タイの社会保険制度や各保険の種類などについて詳しく解説します。準備を万全にして、タイでの生活を快適にスタートしましょう!
- タイへの移住を検討している方
- タイで長期滞在を予定している方(留学や駐在を含む)
- 現地の医療費や保険事情について詳しく知りたい方
- タイ移住に向けた準備を効率的に進めたい方
外国人が利用できる保険制度
まず、私たち外国人がタイで利用できる保険の種類は以下の通りです。
保険の種類 | 対象者 | 特徴 | 補償内容 |
---|---|---|---|
社会保険制度(SSS) | 就労ビザを持ち、雇用主がいる外国人 | 雇用主と従業員が給与の一部を拠出し、基本的な医療サービスが利用可能。 | 基本的な医療サービス(診察、治療、入院など) |
プライベート海外医療保険 | 日本の保険会社が提供する海外医療保険加入者 | 高度な医療サービスや私立病院での治療が受けられる。 | 高度な医療サービス、私立病院での治療、緊急搬送など |
タイ現地の民間医療保険 | タイの保険会社が提供する保険プラン | 保険料が比較的安いが、補償内容が限定的な場合がある。 | 基本的な医療サービスや一部の私立病院治療、補償範囲はプランによる |
旅行保険 | 旅行・短期滞在者 | 医療費だけでなく、盗難やフライトキャンセルなどもカバーすることが多い。 | 医療費、盗難、旅行キャンセルなどの補償 |
クレジットカード付帯保険 | クレジットカードを所有している本人 | 自動付帯と利用付帯がある。また、保険料はカードの年会費に含まれており、別途保険料を支払う必要はない。 | 医療費、盗難、旅行キャンセルなどの補償 |
タイの社会保険制度(SSS)
タイの社会保険制度(Social Security Scheme: SSS)は、タイで働く外国人労働者やタイ国民に対して提供される公的な医療保険制度です。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | タイで働く外国人労働者、タイ国民 |
加入条件 | 就労ビザを持ち、タイで働く外国人、タイの企業に雇用されている人が対象 |
保険料の負担者 | 雇用主と従業員がそれぞれ一定割合を給与から拠出(労働者負担と雇用主負担の合計) |
保険料率 | 約5%(労働者と雇用主がそれぞれ拠出、最大月額制限あり) |
給付内容 | 医療サービス、失業手当、出産手当、傷害・病気手当、老齢年金など |
サービス内容 | 公立病院での医療サービス(診察、薬、検査、手術、入院など) |
医療サービスの範囲 | 公立病院での医療サービスが主となり、私立病院での医療費は補償外の場合がある |
タイの社会保険制度の特徴
項目 | 内容 |
---|---|
医療サービス | – 公立病院で診察、薬、検査、治療、手術、入院費がカバーされる。 – 私立病院での治療は原則として対象外。 |
保険料 | – 労働者と雇用主が給与から一定割合を拠出(労働者負担は約5%)。 – 拠出額には上限があり、低所得者や高所得者の間で負担が調整されている。 |
給付内容 | – 医療給付: 基本的な診察、薬、治療、手術、入院費がカバー。 – 失業手当: 一定期間以上働いている場合、失業時に手当が支給。 – 出産手当: 妊娠・出産に関連する費用や手当。 – 老齢年金: 一定年齢に達した後に年金が支給。 – 傷害・病気手当: 働けなくなった場合に支給される。 |
加入手続き | – 外国人は就労ビザを持っており、雇用主が手続きを行う。 – 社会保険に加入した証明として、保険証や社会保険証書が必要。 |
外国人の医療保険 | – 外国人も社会保険制度に加入可能だが、就労ビザを持ちタイの企業に雇用されていることが条件。 – 自営業やフリーランスは社会保険制度に加入できない。 |
保険料率•••
タイの社会保険制度における保険料は、労働者と雇用主がそれぞれ約5%ずつ拠出しますが、保険料には月額の上限があります。
2024年の情報を基にしたタイの社会保険料率における月額上限は次の通りです:
- 最大月額報酬基準: 15,000バーツ
(月収が15,000バーツを超える場合でも、保険料は15,000バーツを基準に計算されます)
これを基に、労働者と雇用主がそれぞれ支払う保険料の額を計算すると:
- 労働者の負担額: 15,000バーツ × 5% = 750バーツ
- 雇用主の負担額: 15,000バーツ × 5% = 750バーツ
したがって、最大で労働者と雇用主合わせて1,500バーツ(750バーツ × 2)が月額の社会保険料として支払われることになります。
- 月収が15,000バーツを超える場合でも、社会保険料は最大15,000バーツを基準に計算されるため、それ以上の支払いは発生しません。
- タイでの日本人の最低賃金は5万バーツと法律で決められているため、したがって日本人労働者の社会保険料の負担額は750バーツ、月々のお給料から天引きされます。
タイの社会保険制度デメリット
タイの社会保険制度は、外国人労働者にも適用される医療保障の制度で、月々750バーツの保険料で、医療サービスをはじめ、様々な給付金を受けることができます。しかし、日本の制度と比べると、サービスの質や手当の金額など利用条件には厳しい点が多いのも事実です。
例えば、タイの公立病院で提供される医療サービスは、診察や薬、治療、手術、入院費など基本的な医療がカバーされていますが、そのサービスの質には病院や地域によって大きな差があります。特に公立病院では、いつもかなり混雑しており、十分な医療を受けられないことがあります。
さらに、公立病院では通訳がいないことが多く、タイ語でのコミュニケーションが求められるため、言葉の壁に不安を感じる外国人も少なくありません。迅速に医療を受けたいと考える外国人にとっては、長時間の待機や医療サービスの質に不満を感じることもあるため、利用には不便を感じることが多いでしょう。
基本的にタイの社会保険制度を利用する場合、公立病院での治療を受けることになりますが、利用できる病院には制限があります。加入者は、勤めている会社が事前に登録されている病院でのみサービスを受けることができ、通常は会社が契約している近隣の公立病院が指定されるため、会社の所在地に近い病院に通うことが一般的です。
- タイで正式に就業している場合、社会保険への加入が義務付けられているため複雑な手続きは不要。
- 保険料が安価で、基礎的な医療保障で十分だと感じてる人。
プライベート海外医療保険
プライベート海外医療保険とは、海外に住んでいる、または旅行中の人々を対象に、民間の保険会社が提供する医療保険です。これは、海外での医療費をカバーするために設計されており、現地の公的医療保険に頼らずに、個別に契約するタイプの保険です。
プライベート海外医療保険の特徴
特徴 | 説明 |
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海外での医療費をカバー | 海外での治療費、入院費、手術費などを保障。 |
緊急対応が可能 | 急病や怪我に対する治療費、緊急搬送、帰国費用をカバーするプランもあり。 |
病院や医師を自由に選べる | 公的保険に比べて病院や医師の選択肢が広く、質の高い医療サービスを受けやすい。 |
保障内容が柔軟 | 基本的な医療保障に加え、歯科治療、予防医療(健康診断、ワクチン)、出産などのオプションが選べる。 |
世界中で適用可能 | 契約エリア内であれば、世界中どこでも利用可能。旅行や移動が多い人にも適している。 |
24時間サポート | 緊急時に保険会社が医療機関の紹介、通訳サービス、治療手続きの支援を提供。 |
自己負担や免責額の設定あり | 一部のプランでは、一定金額まで自己負担が必要。免責額が低いと保険料が高くなる。 |
保険料が高額 | 年齢、健康状態、保障内容によって保険料が異なる。高齢者や既往症がある人は特に高額になる傾向。 |
長期滞在や移住向けの設計 | 留学、駐在、移住などの長期的な海外生活を想定して設計されており、旅行保険より保障範囲が広い。 |
公的保険の不足を補う | 現地の公的医療制度が不十分な場合に、それを補完する役割を果たす。 |
プライベート海外医療保険は保険料が高額になる傾向があるため、現地での収入状況や生活費を十分に考慮し、自分の経済状況に見合ったプランを慎重に選ぶことが重要です。
また、保障内容が多いプランほど保険料が高くなるため、必要な保障と不要な保障を明確にし、コストパフォーマンスを意識した選択を心がけましょう。
- 海外で長期滞在する人
- 公的医療では受けられない高度な治療や私立病院のサービスを利用したい人
- 緊急治療や入院時に発生する高額な医療費をカバーして自己負担を抑えたい人
- タイの公的保険が不十分だと感じる人
現地の医療保険
タイの民間医療保険とは、タイ国内で提供される民間の保険会社が運営する医療保険のことです。公的医療保険ではカバーされない医療費やサービスを補完し、タイ在住の外国人や高品質な医療を求めるタイ人が主に利用します。
タイの民間医療保険の特徴
特徴 | 説明 |
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幅広いプランの選択肢 | 基本的な入院保障から、外来治療、予防医療(健康診断、ワクチン)、高度な治療をカバーするプランまで幅広い。 |
高品質な病院を利用可能 | 私立病院での治療費をカバーするため、国際基準の医療サービスを受けやすい。日本人に人気のバムルンラード病院やサミティヴェート病院など、タイ国内の高評価な私立病院での治療をカバー。英語や日本語対応が可能。 |
外国人向けプランの充実 | 長期滞在者や退職移住者(リタイアメントビザ所持者)向けの保険が多く、英語対応のサービスも充実している。 |
保険料が多様 | 年齢、健康状態、選択する保障内容によって保険料が大きく異なる。 |
タイ国内限定の保険が多い | 保険の適用範囲はタイ国内のみのプランが多く、国際的なカバーを希望する場合は別途海外医療保険を検討する必要がある。 |
加入の簡便さ | 健康状態に問題がなければ加入手続きが簡単で、即日から保険が適用される場合もある。 |
保険料が比較的安価 | 保険料が安価で、基本的な保障でも十分なカバーを得られる。 |
既往症に制限がある場合が多い | 既往症がある場合、保険加入が難しい場合やその治療に関するカバーが制限されることが多い。 |
代表的な民間保険会社
以下は、タイで代表的な民間医療保険会社とその特徴を表にまとめたものです。
保険会社 | 特徴 |
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AIA Thailand | タイ国内最大級の保険会社。多様な医療保険プランを提供し、入院保障、がん治療、健康診断を含むプランが人気。 |
Bangkok Insurance | バンコク拠点の保険会社で、個人用医療保険や家族向け総合プランを提供。私立病院での優先的な医療サービスが特徴。 |
Cigna Thailand | 外国人向けプランが充実し、英語対応のサポートが強み。在タイ外国人やリタイアメントビザ所持者向けの専用プランを提供。 |
Pacific Cross | アジア全域で事業を展開。タイ国内でも多くのプランを用意し、国際的なカバーが可能なプランもあり、旅行者や出張者にも対応。 |
- 長期的にタイに滞在する外国人。
- 年間の保険費用は抑えつつ、もしもの時のために備えておきたい人。
- 公的保険では不足する高品質な医療サービスを求める人。
旅行保険
旅行保険(Travel Insurance)は、旅行中に発生する予期せぬトラブルに対して経済的な保障を提供する保険です。国内旅行や海外旅行を問わず、病気やケガ、盗難、フライト遅延など、さまざまなリスクに備えるために利用されます。旅行の内容や期間に応じて選べるプランが用意されています。
主な保障内容
保障内容 | 説明 |
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医療費補償 | 旅行中の急病やケガによる医療費をカバー。海外では医療費が高額になることが多く、重要な保障。 |
旅行キャンセル費用補償 | 旅行前のキャンセル費用や変更手数料をカバー。病気や家族の緊急事態が理由の場合に適用されることが多い。 |
携行品損害補償 | 荷物の盗難、破損、紛失時に費用をカバー。カメラやスマートフォンなどの貴重品にも適用可能。 |
賠償責任補償 | 旅行中に他人に損害を与えた場合の賠償費用をカバー。例:ホテルの備品を壊した場合など。 |
フライト遅延補償 | フライト遅延や欠航により発生する宿泊費や食事代をカバー。 |
救援者費用補償 | 旅行先での緊急救助や搬送、家族の現地渡航費用をカバー。 |
- 医療費が高額な国を訪れる人。
- 長期間の旅行、長期滞在を予定している人。
- アクティビティやスポーツを楽しむ予定がある人。
- 高価な電子機器や貴重品を持ち歩く人。
クレジットカード付帯保険
クレジットカード付帯保険とは、特定のクレジットカードを所持することで自動的に付与される保険サービスのことです。主に旅行中のトラブルに対する保障が多く、医療費、携行品損害、賠償責任、旅行キャンセル補償などをカバーすることが一般的です。一部のカードでは、購入商品の保険やショッピング関連の保険も付帯される場合があります。
特徴
特徴 | 説明 |
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手軽に利用可能 | クレジットカードを所持しているだけで保険が付帯される場合が多い(自動付帯)。一部のカードでは、旅行代金をそのカードで支払うことで保険が適用される(利用付帯)。カードによって自動付帯か利用付帯かが異なるため確認が必要。 |
追加費用不要 | クレジットカードの年会費に保険料が含まれているため、別途加入する必要がない。 |
保障額が限定的 | 保険の保障額や範囲が、専用の旅行保険よりも少ない場合がある。 |
海外旅行に強い保険内容 | 多くのクレジットカードは海外旅行保険に特化しており、医療費や救援費用などがカバーされる。 |
対象期間がある | 日本を出国してから適用される期間があらかじめ定められている。 |
主な保障内容
保障内容 | 説明 |
---|---|
海外旅行傷害保険 | 海外旅行中の病気やケガによる医療費をカバー。 |
携行品損害補償 | 荷物の盗難、破損、紛失時の費用をカバー。 |
賠償責任補償 | 旅行中に他人や他人の物に損害を与えた場合の賠償費用をカバー。 |
救援者費用補償 | 緊急救援や搬送費用、家族の現地渡航費用をカバー。 |
ショッピング保険 | クレジットカードで購入した商品が破損・盗難された場合の補償(カードによって異なる)。 |
旅行キャンセル補償 | 一部のカードで、旅行をキャンセルした場合のキャンセル料をカバー。 |
- 短期間の海外旅行、短期滞在をする人
- クレジットカードを頻繁に利用する人
- 保険料を抑えたい人
クレジットカード付帯保険は、旅行の頻度や旅行先のリスクに応じて便利な選択肢となります。ただし、保障内容や条件を事前に確認し、必要に応じて追加の旅行保険を検討することが重要です。
日本の国民健康保険加入者が海外で病院を利用した場合の補償制度
日本の国民健康保険に加入している場合は、海外で病院を利用しても一定条件のもとで医療費の一部が補償される仕組みがあります。これを 「海外療養費制度」 といいます。
海外療養費制度の概要
項目 | 内容 |
---|---|
対象 | 海外で急病やケガで治療を受けた場合が対象(健康保険でカバーされる治療に限る)。 |
補償内容 | 実際に支払った医療費のうち、日本国内で同じ治療を受けた場合の保険適用分が払い戻される。※海外での医療費は高額になることが多いため、自己負担額が多くなる可能性がある。 |
申請方法 | 治療費を一旦全額自己負担で支払い、帰国後に住民票のある自治体に申請することで払い戻しを受けられる。 |
申請に必要な書類
- 診療内容明細書(医師が作成)
- 治療内容が詳細に記載された書類。
- 原則、現地の病院で英語または現地語で発行されるが、翻訳が必要な場合もある。
- 領収書(支払証明書)
- 治療費の金額と支払いが証明できる書類(こちらも翻訳が必要)。
- 海外療養費支給申請書
- 自治体の窓口やホームページで入手可能。
- パスポートのコピー
- 渡航期間を証明するための出入国スタンプ部分のコピー。
- 振込先口座情報
- 払い戻し金を受け取る口座情報。
- 対象外の治療
- 美容整形、歯科治療(緊急性のあるものを除く)、予防接種など、保険適用外の治療は補償されません。
- 自己負担額
- 日本で同じ治療を受けた場合に適用される自己負担割合(通常30%)が適用されるため、全額返金されるわけではありません。
- 補償範囲の制限
- 現地の医療費が日本の基準を超えていても、払い戻しは日本国内の保険診療相当額が上限。
- 申請期間
- 帰国後、原則として 2年以内 に申請が必要。
- 短期滞在者や旅行者の人
- 日本の国民健康保険に加入している人
国民健康保険に加入している場合でも、海外での医療費補償は限定的です。事前に海外旅行保険などを準備することで、より安心して海外滞在を楽しむことができます。
実体験でわかった!タイでの医療費を抑える保険選びのポイント
ちなみに、私は現在タイの社会保険に加入しており、毎月750バーツが天引きされています。この保険を利用して、軽い風邪や腹痛の際には、会社が登録しているローカルの病院に行き、無料で診察・治療を受け、必要な薬も処方されています。
一度、施術が必要になった際には、言葉が通じないローカルの公立病院での治療に不安を感じたため、クレジットカード付帯保険を利用し、通訳サービスが利用可能な市立病院で施術を受けることができました。
ただし、私が利用しているクレジットカードの保険は、日本を出国してから3か月間しか保障が適用されないため、タイミングによっては利用できないという制約があります。
短期滞在や日本への一時帰国が頻繁にある場合は、クレジットカード付帯保険をうまく活用することで無駄な出費を抑えられます。しかし、万が一に備えるためにも、自分の状況やライフスタイルに合った保険を選ぶことが重要です。
まとめ
タイで安心して暮らすためには、国民健康保険以外の保険の選択肢をしっかりと理解し、自分に合ったプランを準備することが大切です。
- 保険加入は必須: 特に私立病院を利用する場合、医療費は非常に高額になることがあるため、適切な保険を選ぶことが重要です。
- 定期的な見直し: ライフスタイルや健康状態に合わせて保険内容を見直すことをおすすめします。
- 現地情報の確認: タイの保険制度は頻繁に変更される可能性があるため、最新情報をチェックしましょう。